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Yasuhiro Koma

全仏オープン2023を振り返って-川又智菜美コラム Vol.02


今年2つ目のグランドスラム、全仏オープンが6月11日に閉幕しました。

男子シングルスは、36歳となってなお男子テニス界に君臨するノバク・ジョコビッチ選手が優勝。(7-6、6-3、7-5)これで男子選手史上最多となるグランドスラム23度目の優勝を成し遂げました。素晴らしい記録です。右肘の怪我の状態が心配されていましたが、やはりグランドスラムでのジョコビッチ選手は特別強いなと思わせるテニスを見せつけました。5セットマッチであるグランドスラムは他のツアー大会に比べて体力的にも厳しいはずです。しかし、グランドスラムを知り尽くしているジョコビッチ選手は経験でカバーしてしまうのでしょうか。世代交代が数年前よりささやかれていますが、ずっと王座を明け渡さず君臨していて欲しい気もしますし、グランドスラムで若手選手がジョコビッチ選手に勝利している姿も見てみたい…個人的にはなんとも複雑な気持ちです。アルカラス選手を筆頭に若手選手の活躍は目覚ましいものがあり、これから勢力図がどう移り変わっていくのか目が離せません。


そして、昨年の全仏オープンでも決勝進出したキャスパー・ルード選手は残念ながら2年連続の準優勝となりました。グランドスラムという大舞台で猛者たちと戦い決勝まであがってくることは本当に素晴らしいのですが、この1年でグランドスラムの決勝3回目のルード選手…個人的にはそろそろ優勝カップを掲げている姿が見たい!と思ってしまいます。24歳のルード選手、これからもチャンスは沢山あると思うので楽しみです。



女子シングルスは現在の女子テニス界の女王と言って良いでしょう、イガ・シフィオンテク選手が優勝し2連覇しました。決勝で相対したのは、第2シードのサバレンカ選手との死闘を制したカロリーナ・ムチョバ選手です。この決勝も最後までどちらに転ぶのかハラハラする2時間46分の激戦でした。(6-2、5-7、6-4)一時の女子テニス界は、毎回と言っていいほどグランドスラムで新女王が誕生し誰が頂に立つのか全くわからない状況でした。新女王がグランドスラムのたびに誕生するので、なんとなく新女王の座は空席だったような印象です。しかし、今はこのシフィオンテク選手がしっかりとその座についています。

22歳のシフィオンテク選手がここからどんな記録を打ち立てていくのか?注目です。



さて、ここからは日本人選手の活躍を振り返っていきたいと思います。


〈西岡良仁選手ベスト16入り〉

西岡選手は、今年1月の全豪オープンに続きベスト16入りを果たしました!


1回戦 VS ジェフリー・ジョン・ウルフ選手 1-6、3-6、6-4、6-3、6-3

2回戦 VS マックス・パーセル選手       4-6、6-2、7-5、6-4

3回戦 VS ティアゴ・セイボト・ウィウド選手  3-6、7-6、2-6、6-4、6-0

4回戦 VS トマス・マルティン・エチェベリ選手 6-7、0-6、1-6


スコアはご覧のとおりです。勝利した試合も一筋縄ではいかず、どれもかなりもつれた戦いとなりました。全ての試合で第1セットは相手にとられており、逆転で勝利を掴むという結果となっています。最後の4回戦は脚を痛めてしまったこともあり悔しい結果となりましたが、日本人選手がベスト16まで残ることは大変喜ばしいことです。今回の全仏オープンは相手にリードされていても最後まで諦めずにファイトする西岡選手を目の当たりにし、西岡選手が一つ上のステージにあがっていった瞬間を見られたような気がしました。先ほども述べましたが、グランドスラムは5セットマッチです。通常のツアー大会に比べて長いということもあり、1回戦のように最初の2セットとられてしまったとしても最後の最後までわからないところが面白いですね。西岡選手は確実にATPツアーでポイントを積み重ねていってランキングをあげていましたが、今年になってはグランドスラムで2大会連続ベスト16入りしたということもあり自己最高ランキングを更新、現在は24位につけています。テニスファンの中には大会は基本的にグランドスラムのみチェックするという方もいらっしゃいますが、そういう方にとってもこうしてグランドスラムで活躍してくれることは喜ばしいことです。そして実は西岡選手、クレーコートが苦手であることを公言しています。苦手としているクレーでここまでの戦績をだせていると今年の残りのグランドスラムにも大きな期待がもてます。


〈加藤未唯選手、ミックスダブルス優勝〉

今回の全仏オープンを機に、加藤選手の名を知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

女子ダブルス3回戦で加藤未唯&アーディラ・スーチャディ組が失格となったニュースは日本の地上波ニュースやネットニュースを含め多く取り上げられました。事の次第を簡単にご説明すると、女子ダブルス3回戦第1セットを落として迎えた第2セット3-1の第5ゲームで、加藤選手がコートに落ちていたボールをバックハンドで軽く打ち返したところ、そのボールがおそらく彼女が思っていたよりも長くなってしまい不運なことにもその先にいたボールガールに当たってしまいました。ボールガールは泣き出してしまい、一度は警告という判断がなされましたが相手選手の抗議もあり最終的には失格という判断に。この判断については日本国内だけでなく世界中から注目を浴び、加藤選手の知名度があがることとなりました。意図しなかったことで失格となり、当然大きなショックを受けた加藤選手は失格の判断後に号泣しており、スーチャディ選手が懸命に慰めていたもののその姿には胸をしめつけられました。

女子ダブルスは残念ながらそこで失格となってしまったものの、加藤選手はその時点でプッツ選手と組んでいるミックスダブルスでも勝ち残っておりそちらで奮闘。失格直後のミックスダブルスの試合では、加藤選手のメンタル状態がかなり心配されましたが、見事勝利し、試合が終わった後は安堵したようにまた加藤選手に涙が浮かびました。相当なプレッシャーだったと思いますが、あんな出来事がありプッツ選手も加藤選手のために頑張ろうという気持ちが画面越しにも伝わってきて本当に良いダブルスでした。

2人はそのまま駆け上がり、迎えた決勝…相手はマイケル・ヴィーナス選手と、全米オープンでシングルス優勝経験もあるビアンカ・アンドレスク選手。さすがのアンドレスク選手、ストロークの力強さを改めて実感し、みている私はハラハラ…第1セットは奪われたものの、そこから逆転し見事グランドスラム初タイトルを手にしました。

女子ダブルスの失格から考えるとなんともドラマティックな展開。色々あった全仏オープンですが最後は笑顔で締めくくることができてよかったです。



パリで行われた激闘の数々、皆さんいかがでしたでしょうか?

グランドスラムを2週間夢中になって追っていると終わった時なんだか寂しさを感じてしまいますがもうすぐ7月3日よりウィンブルドンが開幕します!今度はイギリスに移って芝の上での戦いです。今度はどんなドラマが繰り広げられるのか?注目です。


このコラムの執筆者


川又智菜美(かわまた ちなみ)


・神奈川県出身

・慶應義塾大学法学部法律学科卒業後RSK山陽放送でアナウンサーをした後、フリーアナウンサーとなりTBSの朝の情報番組「はやドキ!」や日テレNEWS24のキャスター、WOWOWアナウンサーなどを担当

・社会人になってからテニスと出会い週に3-4回テニスをするほどハマっており、worldsports.jpにてテニスファン目線でのコラム連載







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